SPAC「ふじのくに⇄せかい演劇祭2015」についてはプレス発表会のレポートを書きました。充実していますのでぜひご覧ください。
私が拝見・参加した演目は下記です。レビューが書けていないので、作品だけでも箇条書きにしておきます。すみません!
※このエントリーは2016/08/24に投稿しました。
4月25日(土)13:00 SPAC『メフィストと呼ばれた男』
5月02日(土)14:30 『例えば朝9時には誰がルーム51の角を曲がってくるかを知っていたとする』
5月02日(土)19:00 ダニエル・ジャンヌトー演出・SPAC『盲点たち』
5月03日(日)12:00 イサーム・ブーハーレド、ファーディー・アビーサムラー演出『ベイルートでゴドーを待ちながら』
5月03日(日)14:30 無垢舞蹈劇場出演『觀 ~すべてのものに捧げるおどり~』
5月05日(火)12:00 イ・ユンテク(李潤澤)×演戯団コリぺ『小町風伝』
5月05日(火)16:00 ジャン=ミシェル・ドープ演出『聖★腹話術学園』
以下、『メフィストと呼ばれた男』の感想です。
SPAC「メフィストと呼ばれた男」。三時間+休憩15分。税金で運営されている公立劇場に時の政府が介入。身につまされる。変化の中で芸術が芸術としてあり続けることは、非常に困難なのだと改めて感じた。古典戯曲の引用多数で楽しい。芝居が民衆的にされる場面は「黄金の馬車」と重なった。
— 高野しのぶ (@shinorev) 2015年4月25日
⇒CoRich舞台芸術!『メフィストと呼ばれた男』
≪あらすじ≫ 公式サイトより
時は1932年、ドイツ・ベルリンの国立劇場で『ハムレット』の稽古が行われている。そこへ総選挙でナチスが第一党になったとの報せが入り、動揺する劇団員たち。スター女優のレベッカは身の危険を感じ、国外へ逃亡する。残った演出家のクルトはかつてメフィスト役で大当たりした名優。彼のもとに「新体制で文化大臣になる」という男が現れ、左翼活動家ヴィクターに代わり、新しく劇場の芸術監督になるよう誘う。劇場を、芸術を守るためと信じて、その申し出を受けたクルトだったが、次第に時代の波に飲み込まれていく…。
≪ここまで≫
メルマガ2015年5月号「先月のベスト3」のベスト1でした。以下、メルマガより転載。
税金で運営されている公立劇場に時の政府が介入し、現場で働く演出家、俳優、スタッフはどうなったのか。ナチス政権下のドイツの公立劇場を舞台にした人間ドラマです。多数引用される古典戯曲の劇中劇の巧妙さと、名ゼリフを楽しみつつ、歴史が軽んじられる今の日本を憂い、身につまされました。猛スピードの時代の変化の中で、芸術が芸術としてあり続けることは、非常に困難なのだと改めて感じました。
以下はメモしていた内容です。
リアリズムの手法にのっとったストレート・プレイを観る時は、言葉を繊細なままつぶだたせて、スっと心身に届けてくれる俳優が私にとってのいい俳優だ。彼が出ている時はいつもそうなのだが、ナチス党員の若い俳優ニコラスを演じた若菜大輔さんにずっと目を奪われていた。思えば彼の新国立劇場演劇研修所時代にラジオ番組を舞台化する試みを見せていただいた時から、ずっとそうだ。すずやかで透明感があるのに、突き刺すような鮮烈な存在感。『美しきものたちの伝説』の幽然坊役で笠をかぶったまま(顔は見せずに)舞台中央奥にただ立っていた時も、青白い光を放っていたように感じた。今回、ハムレットの亡霊役として登場した時も、ハムレットとガートルードの見せ場ではなく、舞台から立ち去った彼ばかりを追いかけてしまう。他に良かったと思った俳優は美加理さん、山本実幸さん。宮城さんの演技についての注文は、いわゆるスタニスラフスキー・システムの方法論とは全然違ったようなので、誰がそれの正解を出していたかは不明だし、おそらくまだ誰もが過程の段階なのだろうと思う。
劇中でナチスの文化大臣が放った「演劇と軍隊は似ている」というセリフに説得力があった。観客は立って暴れられる状態なのに、なぜだか周囲に合わせて静かに椅子に座っている。それは一糸乱れず行進する軍隊と同じだと。確かに抑制に体を預ける無防備さを集団で共有することは、2つに共通していると思う。周囲への思いやりや警戒心を一時的に封印して、1つのことに集中する時間。その制限の中での自由が、芸術鑑賞の集中力を高めてくれる。だからこそ洗脳効果も高いはずで、やはり演劇は危険な芸術だと思う。観客が物語に過剰に没頭することを防ぐために異化効果が使われるのはもっともなことだし、私自身が劇場の椅子に静かに座りながら、自分の陶酔に警戒し続けなければいけない。そして鑑賞後は他の観客の感想を参照しながら、冷静に鑑賞時の自分を振り返る。この「鑑賞後」の時間こそが、観劇体験をもっとも豊かにしてくれる宝物なのだ。
SPAC新作 演劇/日本(静岡)
出演:阿部一徳、大高浩一、鈴木陽代、鈴木麻里、大道無門優也、本多麻紀、美加理、山本実幸、吉植荘一郎、若菜大輔、渡辺敬彦
演出: 宮城聰
作:トム・ラノワ(クラウス・マンの小説に基づく)
音楽: 棚川寛子
空間構成: 木津潤平
翻訳: 庭山由佳
翻訳協力: 大西彩香
舞台監督: 内野彰子
演出補: 中野真希
美術: 深沢襟、佐藤洋輔
照明操作: 松村彩香
音響操作: 山﨑智美
演出部: 廣﨑ナギ子
ワードローブ: 清千草
ヘアメイク: 梶田キョウコ
英語字幕翻訳: サラ・シュターク
英語字幕操作: 大西彩香
制作: 大石多佳子、米山淳一
製作: SPAC-静岡県舞台芸術センター
後援: ベルギー大使館
上演時間: 180分(予定) 日本語上演/英語字幕
【発売日】2015/02/28
一般大人:4,100円
SPACの会会員割引:3,400円
【ペア割引】 1名様につき3,600円
【グループ割引】 3名様以上で1名様につき3,200円
【ゆうゆう割引】(※満60歳以上の方が対象となります)3,400円
【学割】大学・専門学生 2,000円 / 高校生以下 1,000円
【障がい者割引】2,800円
【全演目パスポート】一般17,000円 / SPACの会会員15,000円
※各種割引を組み合わせてのご利用はできません。
※割引をご利用の際は、必ずご予約時にお知らせください。
※全演目パスポート、障がい者割引については電話・窓口のみでのお取り扱いになります。
http://spac.or.jp/15_mefisto-for-ever.html
※クレジットはわかる範囲で載せています(順不同)。間違っている可能性があります。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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