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しのぶの演劇レビュー
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2015年04月27日

【ご報告】「第2回高校生劇評グランプリ表彰式」が行われました

 昨年に続いて選考委員をつとめさせていただきました、高校生劇評グランプリの表彰式が行われました。受賞作はすべて公式サイトで公開されています。よかったらぜひお読みください。⇒高校生劇評グランプリ公式ツイッター

 最優秀賞は文楽の劇評を書かれた高校2年生の吉原爽斗(よしはら・さやと)さん。吉原さんがご覧になった舞台(⇒私も偶然観てました)に出演されていた、文楽人形遣いの桐竹勘十郎さんがゲストとして登壇され、選考委員の1人である田中綾乃さんの司会進行により、受賞者との対談も実現しました。

 ⇒News-Headline「高校生の分析に勘十郎も驚倒、「第2回高校生劇評グランプリ」表彰式レポ―ト」(2015.03/31)

 講評】ジャンルを問わず多彩な舞台芸術との出会いを(高野しのぶ)
 昨年度よりも文章力が飛躍的に向上していて驚きました。劇評レクチャーに参加された方や、高校生劇評グランプリ公式サイトにある講義内容を読まれた方も多かったのかもしれません。打てば響き、ぐんぐん育つ高校生のポテンシャルを見せつけられた思いです。高校生応援特別割引チケットで観た公演の劇評も多数ありました。今後もこのようなチャンスを貪欲に掴んでいただきたいです。
 日本には伝統芸能、現代演劇、ミュージカル、ダンス等の多彩な舞台を観られる恵まれた環境があります。また、テレビや映画館、インターネットで舞台中継を見られる機会も増えるでしょう。幅広く、さまざまな種類の舞台芸術に触れることで、劇評の焦点をより明確にできるだろうと思います。
 舞台を観て感じたこと、考えたことを率直に、詳細に表現した作品に好感を持ちました。確かに存在して、消えていった舞台に自分の言葉で光を当て、劇評という形にすることで舞台芸術の世界に参加してください。若き日の劇評は自分の成長の記録にもなります。

 檀上で国際演劇協会日本センター会長の永井多恵子さんから受賞者に表彰状が手渡された後、対談が行われました。

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 勘十郎:受賞作の題名である「沈黙の劇」とはまさに人形遣いと同じ。あらためて文楽とはそういう芸術だったと思った。人形遣いは人形に全てを込め、決して言葉は発しない。
 勘十郎:文楽は1734年に三人遣いになった。この発明をした人は凄いと思う。文楽では何にでもなれるのが魅力。私は人形を持ったら怖いものなし。人間にできることで、人形にできないことはない。

 表彰式終了後は春らしい陽気の中、国立能楽堂で記念撮影をしました。

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【最優秀賞】
吉原爽斗「鳴かぬ蛍が身を焦がす―人形浄瑠璃」(日本芸術文化振興会『文楽鑑賞教室 絵本太功記・尼ケ崎の段』)

【ライブパフォーマンス・レビュー部門】 (※50音順)
赤澤みなみ「お台場に現れたマノクワリ歌舞伎座」(ベッド&メイキングス『野外劇「南の島に雪が降る」』)
伊賀彩夏「暴走ジュリエット」 現代に息づくシェイクスピアの作品」(ゴーチ・ブラザース『暴走ジュリエット』)
石本秀一「赤鬼―差別なき世へのあてなき航路を探して」(青山円劇カウンシル『赤鬼』)
靨紗貴「ランボーの幻影」(Bunkamura『皆既食~Total Eclipse~』)
黒田藍子「皆既食』天才と凡才」(Bunkamura『皆既食~Total Eclipse~』)
小林礼奈「観客に突きつける「人生の希望」(東宝『ロンドン版 ショーシャンクの空に』)
鶴巻碧衣「舞台上の魔法」(新国立劇場舞踊『シンデレラ』)
中澤千智「見つけ出す、舞台。」(トゥインクル・コーポレーション『ノケモノノケモノ』)
中村彩美「現代に必要な衝撃」(世田谷パブリックシアター『炎 アンサンディ』)
那須野綾音「劇と今を見つめる」(こまつ座『きらめく星座』)
矢﨑里沙「同じ高校生として」(フェスティバル/トーキョー14『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら)

【映像作品・レビュー部門】
小林環蒔「スクリーンから舞台へ」(東宝東和配給「ビリー・エリオット ミュージカルライブ リトルダンサー」)

【団体賞】
大阪市立咲くやこの花高等学校
東京都立科学技術高等学校

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 能楽堂内のレストランで行われた懇親会では、選考委員のみならず受賞者も1人ずつマイクを持って話をしてくれました。「劇評を書いたことで作品をより深く知ることができた」「作品を観た後の時間を大切にしたいと思った」など、鑑賞者の鑑のような言葉の連続!胸が熱くなり何度も涙をこらえました。歌人の穂村弘さんの言うところの「共感=シンパシー」と「驚異=ワンダー」を引用し、「演劇は虚構によって生み出されるワンダーが常にあり、そこに興味がある」とおっしゃったのは吉原爽斗さん。さすがのご慧眼と思いました。

 帰り際に「たとえ劇評家になっても、人生設計が難しいのではないか」という問いかけをしてきてくれた女子高生がいました。「今の日本で、劇評家という生業だけで生活ができている日本人はいないと推測する。大学教授や新聞記者であったり支えてくれる配偶者がいたり、二足以上の草鞋を履いているのが通常だろう」という私見を述べた上で、「若者は夢に向かって進んでください」とお伝えしました。これは劇評家に限らず言えることだと思うのですが、「食べていくために○○になる」のと「○○がしたいからする」のは別のことです。世界も、時代も変化しますから、今の常識が10年後も通じるとは全く思えません。私は自分の心に聞くことが大事だと思っています。

 少々飛躍するかもしれませんが、竹中香子さんのブログより引用します。南仏モンペリエにあるコンセルヴァトワールの校長Gildas Milinさんの言葉です。

「とにかく夢をみろ。暇さえあれば、夢をみろ。」

 また、東京大学教養学部長・石井洋二郎さんの「平成26年度 教養学部学位記伝達式 式辞」より引用します。

「あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。」
「皆さんも、自分自身の燃えさかる炎のなかで、まずは後先考えずに、灰になるまで自分を焼きつくしてください。そしてその後で、灰の中から新しい自分を発見してください。自分を焼きつくすことができない人間は、新しく生まれ変わることもできません。」

 自分の思いを劇評という、誰かに伝えるための文章にする体験を通じて、舞台とより深い関係を持つ若者が増えて行って欲しいと思います。この賞が永く続くことを願っています。

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【主催者側のツイート】


【最優秀賞受賞作、他についてのツイート】


【受賞者と、受賞対象公演の作り手のツイート】


【選考委員】
扇田昭彦(演劇評論家)
阿部順(全国高等学校演劇協議会事務局長)
高野しのぶ(現代演劇ウォッチャー、しのぶの演劇レビュー主宰)
田中綾乃(三重大学准教授、演劇評論家)
萩尾瞳(演劇・映画評論家)
森山直人(京都造形芸術大学教授、演劇評論家)

【主催】公益社団法人 国際演劇協会日本センター
【実施運営】
高校生劇評グランプリ(GP)実行委員会
-公益社団法人 国際演劇協会日本センター
-東京都高等学校演劇研究会
-NPO法人日本学校演劇教育会
-ワンダーランド(小劇場レビューマガジン)
【協賛】松竹株式会社、東宝株式会社、公益財団法人都民劇場、公益社団法人日本演劇興行協会
【協力】歌舞伎座、劇団四季、新国立劇場、新橋演舞場、帝国劇場、株式会社東急文化村、東京芸術劇場、PARCO劇場、フェスティバル/トーキョー実行委員会(50音順)
【後援】関東高等学校演劇協議会、公益社団法人日本演劇協会
【助成】アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)
平成26年度東京芸術文化創造発信助成対象事業「高校生を中心とする若い世代の観客を育成するための劇場連携プログラム」
公式サイト運営協力:こりっち株式会社
https://www.hs-theatrereview-gp.jp/
https://www.hs-theatrereview-gp.jp/result02/index.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2015年04月27日 15:29 | TrackBack (0)