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REVIEW

2015年07月12日

SPAC静岡県舞台芸術センター『夜叉ヶ池』07/12韮山時代劇場

 観客発信メディア WL(ダブル)が主催する「自転車で巡る韮山:世界遺産の反射炉とSPAC『夜叉ヶ池』を見るツアー」に参加させていただきました。楽しかったー!!!

 伊豆長岡駅→韮山反射炉江川邸代官屋敷韮山時代劇場という流れ。移動手段は駅で借りた電動アシスト自転車です。めちゃくちゃ暑かったですが(汗)、晴れて幸運でした。

 ⇒観客発信メディア WL「韮山の反射炉見学+SPAC『夜叉ヶ池』観劇ツアーのレポート
 ⇒CoRich舞台芸術!『夜叉ヶ池

≪作品紹介≫ 公式サイトより
失踪した東大生
その友人が山奥の村で見たものは?
伝説、自然、恋物語――。
興奮の舞台が、伊豆の国に甦る!
大正初めの山深い村里を舞台に美しい幻想世界を描いた、泉鏡花の傑作戯曲『夜叉ヶ池』。美しく艶やかな衣裳、舞台に満ち心を揺さぶる音楽と俳優たちの生演奏などを駆使し、俳優ひとりひとりの個性を際立たせた演出は、観客の目と耳を捉えて離しません。
(あらすじ)
その昔、村人たちは夜叉ヶ池の竜神とある約束を交わした。「日に三度の鐘をつくこと。さもなければ竜神は池を飛び出し、大水で村を池の底に沈めてしまう…。」行方不明になっていた東大生の萩原晃は、美しい娘・百合と村の人々を守るために、鐘つきの老人からその役目を引き継いでいた。一方、夜叉ヶ池の主・白雪姫(竜神)は、山向こう千蛇ヶ池の若君に恋をしていた。恋しい人に会いたい一心で鐘を壊そうとするが……。そんな中、日照りが続いた村では、村人たちが百合を生贄に雨乞いをしようと企んでいた。
≪ここまで≫

 『夜叉ヶ池』は2008年に観てました。懐かし~。メインキャストは変わってないですね。さすがの重厚感です。白雪姫(夜叉ヶ池の主)役のたきいみきさんのド迫力の美しさにノックアウト。俳優が1つの役を演じ続けてくださることのありがたみが身に沁みました。

 ただ、静かな場面は少々眠くなっちゃいました。人形のように型がはっきり決まった硬い演技が苦手なので。
 2008年と同じ感想ですが、やはり生演奏については、音が鳴らない場面がもっとあってもよかったんじゃないかと思いました。単純に、セリフが聞こえづらいことが多かったせいもあるかもしれません。

 第一次世界大戦前(1913年)に書かれた戯曲なのに、ピタリと今に重なりました。やはり泉鏡花という作家もまた予言者だったのだろうなと思いました。

 妖怪(?)たちの衣装がとっても独創的です。特に白雪姫の衣装・ヘアメイクは圧巻!胸元と脚のペインティングが妖艶!

 ここからネタバレします。

 なまずの使者が持ってきた箱を開けると、スモークがもくもく!そして舞台全体を覆いそうな白煙の中、白雪姫が登場します。めっちゃかっこいい!箱から出てきたラブレターは、剣が峰にある千蛇ヶ池の若君が、白雪姫に宛てたもの。“池の主”同士が恋に落ちるという設定が、泉鏡花ワールドですよね♪

 百合を雨乞いの生贄にすると勝手に決めて、彼女を無理やりさらおうとする村人たちの横暴さったら!権力を振りかざし、似た者同士で徒党を組んで、他人の意見など全く聴かず、頭ごなしに怒鳴って、暴力で抑え込もうとするんです。鐘の音の歴史を無視し、文学士(晃の友人)に暴言を吐く代議士なんて、安倍内閣の閣僚にそっくりです。ひるがえって竜神の化身(=妖怪)である白雪姫は、手紙をしたためて気持ちを伝え合うし、人間(=敵)の百合のことを思いやるし、鐘の音が鳴る限り動かないという約束を守るし…人間よりずっと上品で、真心があります。
 
 村人たちとの言い争いは刃傷沙汰へと発展。百合が自害し、続いて晃も、ちょうど午前2時を回ったところで後を追います。丑三つ時に鐘の音が鳴らなかったため、村を大水が襲い、村人たちはみな水没。舞台中央奥の上部ロフトに妖怪たちが一列に並び、大きな太鼓を打ち鳴らして勝どきを上げます。白雪姫は恋人と会えることを喜びながら、動かなくなった百合にも優しい言葉をかけました。「水の中で仲間になれたね」という友愛の情を感じて、私も、愚かな人間社会に居るよりも妖怪たちの仲間に入りたいと思いました。ほんとに汚い、淀んだ世の中になったものです。いえ、昔からそうなのでしょう。だからこそ妖怪たちの言葉、心を胸にとめておかなければなりません。

 今回も小泉今日子さんの歌が流れました(ラストシーンで)。この物語は100年前のファンタジーではなく、現代日本の現実なのだと受け取りました。

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≪静岡・掛川・韮山≫
韮山反射炉世界遺産登録応援企画
入場無料(要予約)
ふじのくに野外芸術フェスタ2015 in 伊豆の国市
出演:岩澤侑生子、奥野晃士、春日井一平、木内琴子、貴島豪、黒須芯、鈴木真理子、たきいみき、永井健二、中野真希、仲谷智邦、長谷川直紀、布施安寿香、三島景太、吉植荘一郎
演出:宮城聰
作:泉鏡花
音楽:棚川寛子
舞台美術デザイン:深沢襟
衣裳デザイン:竹田徹
照明デザイン:樋口正幸
製作:SPAC-静岡県舞台芸術センター
主催:ふじのくに野外芸術フェスタ実行委員会
共催:伊豆の国市
後援:駿豆線沿線地域活性化協議会
協力:伊豆箱根鉄道株式会社
http://spac.or.jp/15_yashagaike_nirayama.html
http://spac.or.jp/15_yashagaike_gekitomo.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2015年07月12日 21:20 | TrackBack (0)