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しのぶの演劇レビュー
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2015年08月16日

新国立劇場演劇研修所『朗読劇 少年口伝隊一九四五』08/14-16新国立劇場小劇場

 新国立劇場演劇研修所の9期生と修了生3人が出演する『朗読劇 少年口伝隊一九四五』の千秋楽を拝見しました。今年は8月2日の沖縄公演の後、終戦記念日を挟む3日間の上演で、連日満席。上演時間は約1時間5分。⇒舞台写真 ⇒昨年のレビュー ⇒挿絵入りの本

 9期生は今年6月に韓国に滞在して韓国国立劇団と9日間の交流をされていました(公式facebookページ⇒1011121314151617181920)。一般向けにはこの公演が初お目見えです。場内案内をする下級生(10期生、11期生)の姿も多く、研修所全体で1つの公演を支えている印象を強く受けました。
 チラシをコラージュした今年のポスター↓は宇宙に浮かぶ地球のようですね!⇒去年

20150816_kudentai_poster.jpg

 ⇒CoRich舞台芸術!『朗読劇 少年口伝隊一九四五

 ≪あらすじ≫ 公式サイトより
昭和20年8月6日、一発の原子爆弾が広島の上空で炸裂した。
一瞬にして広島は壊滅。このときから、漢字の広島は、カタカナのヒロシマになった。
かろうじて生き延びた英彦・正夫・勝利の三人の少年は、やはり運よく助かった花江の口利きで中國新聞社に口伝隊として雇われる。
新聞社も原爆で何もかも失ったため、ニュースは口頭で伝えるほかなかったからだ。
三人の少年は、人々にニュースを伝えながら、大人たちの身勝手な論理とこの世界の矛盾に気づいていく。
やがて敗戦.....。
そこへ戦後最大級の台風がヒロシマを襲う。
 ≪ここまで≫

 昨年の8期生版はホラー色が強い印象でしたが、今年は声色を含む役作りが緻密で、地の文を読む時との違いが明快。イスから立ったり、座ったりする動作もビシっと揃っていて、メリハリが効いているのが特徴かなと思いました。『少年口伝隊一九四五』は毎年新しいです。もう10回以上は観てるのに、必ずショックを受けて涙してしまいます。劇場内の観客の集中度が高いし、今年は終演後にロビーに長く居て、展示物を眺めたり、話し合ったりしている方が多かったですね。

~~~以下、勝手ながらパンフレットに掲載されていた演出の栗山民也さんの言葉を引用します。~~~

 「戦争中、私は、殺したくないという希望によって生きた。同時に、殺す役にあたる人に敵意をもつことはなかった。殺し殺される場にともにおかれたものとして共同性の感情をもった。敵味方の区別なく、戦死者に対して脱帽する姿勢が敗戦によってたたれることなく、つづいている。」

 なにか心に刺さるものに出会うたび、記憶に残ったものをノートに書き写す習慣があって、これは、ずっと愛読してきたリベラリスト鶴見俊輔さんの言葉だ。その鶴見さんが、この夏、逝ってしまわれた。
 そんないくつもの大事な言葉を支えにして、今年も朗読劇『少年口伝隊一九四五』と向き合う。戦後七〇年というが、その七〇年前を出発点として、わたしたちはどれだけ考え、どれだけ前へと賢く進むことが出来たといえるのだろうか。
 井上ひさしさんの時代と記憶を綴った一つひとつの焼けるような言葉を、今、強く噛み締めながら、現代へと口伝していく必要を感じる。(栗山民也)

~~~引用終わり~~~

 9期生の方々は演じる役について深く掘り下げ、考え抜いて演じられていたように思いました。声が大きくて、意志の力も強く、太い存在感があります。ただ、相手役との交流は少ない目で、周囲に対して意識があまり開ききってない気はしました。

 ところで、9期生は男性が3人しかいないんですね!(驚き) 物語のメインである3人の少年のうちの2人と、哲学じいたんを演じてらっしゃいました。残り1人の少年(正夫役)は修了生の永澤洋さん(第8期修了)。修了生は合計3人出演されていて、坂川慶成さん(第8期修了)がラジオの声をコミカルに仕上げられていて感心しました。手榴弾を持っていた日本兵などを演じた峰﨑亮介さん(第7期修了)も含め、やはり修了生はのびやかでうまいです。空間全体に対して柔らかさを保ち、一つひとつの言葉を焦らずに届けてくださいました。

 折り込みチラシの束には研修生、修了生がこれから出演される公演のチラシが挟まれていました。たぶんこれまでで一番多いんじゃないかしら。2005年の開所から10年が経ち、修了生の人数が100人を超えて、いよいよ演劇界におけるひとつのグループとしての認知度も高まってきている気がします。

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 研修生のツイッター↓より。各地のメディアに取り上げられています。


≪沖縄、東京≫
【出演(9期生)】花江さん:加茂智里、宇田川はるか、岡崎さつき、髙橋美帆、竹内香織、八幡みゆき、勝利:清水優譲、哲学じいたん:村岡哲至、英彦:草彅智文、正夫:永澤洋(第8期修了)、手榴弾を持っていた日本兵:峰﨑亮介(第7期修了)、ラジオの声など:坂川慶成(第8期修了)
【作】井上ひさし【演出】栗山民也【演出補】田中麻衣子【ギター】宮下祥子【音楽監督】後藤浩明【模型作製】尼川ゆら【照明】服部基【衣裳】中村洋一【音響】秦大介【映像】井形伸一【方言指導】大原穣子【ヘアメイク】前田節子【演出助手】泉千恵(6期修了)【舞台監督】米倉幸雄 舞台監督助手:岩男海史(10期生)、角田萌果(10期生) 制作助手:金指諒子 【研修所長】栗山民也【制作】新国立劇場
【発売日】2015年7月9日(木) 一般 A席2,160円 B席1,620円 学生料金:チケット料金の半額
就学前のお子様のご同伴・ご入場はご遠慮ください。お子様も1人1枚チケットをお求めください。
http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150610_006816.html

※クレジットはわかる範囲で載せています。順不同。正確な情報は公式サイト等でご確認ください。
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Posted by shinobu at 2015年08月16日 18:23 | TrackBack (0)