Ort-d.d(オルト・ディー・ディー。以下オルト。)は倉迫康史さんがプロデュース・演出をされる演劇プロジェクトです。
『乱歩プレイ』については先日の東京国際芸術祭リージョナルシアターシリーズ・フリンジ企画『so bad year』やク・ナウカ・プロデュース『ウチハソバヤジャナイ』に折込まれていたチラシがとてもかっこ良くて気になっていました。
知る人ぞ知る、隠れ家テーマパークの和風オバケ屋敷・官能アトラクション20歳未満お断り♪という感じでした。
はぁぁ・・・・堪能、です。
古い建物の中でなまめかしく繰り広げられる秘められた催し。その名も『乱歩プレイ』。いわゆるSMプレイとか制服プレイとかですねぇ(笑)、そういう意味の“プレイ”です。
入り口がすごかったです。ものすごく暗い廊下を通ると待合室に通されて、そこで“本日のメニュー”を渡されます。デカダン着物美人がひそひそ声で「外界との通信はご遠慮ください(携帯の電源を切る)」「これはあくまでもプレイございます」などと案内し、禁断の秘め事イメージは導入部分でしっかりとスイッチ・オン。
会場に入るとワインやお茶などをメイドさんにおもてなしいただいて、20畳弱の正方形の部屋の壁側にずらりと、中央を囲むようにして観客が座ると、厳かに開会の乾杯。観客は『乱歩プレイ』に参加しに集まった常連客だという設定なのです。
DMや予約完了時のメールに来場の際の注意事項があったのですが↓
“会費/2500円(お飲物お菓子付。お持ち込みも歓迎いたします。)”
“黒っぽいお召し物で御来場いただけると嬉しゅうございます。”
これらの呼びかけにきちんと応えるお客様ばかりでした。大半が黒い服装でお見えになっているし、差し入れも沢山。メイド達からの呼びかけにも進んで参加して、自分からどんどんと楽しむ、非常に酔狂なお客様が集結していました。
短編を4本上演してくださいました。その合間にクッキーやオードブルを配ってくださったり、おもてなしが本当にお上手でした。食べ物ってほんのひとかけらのクッキーでも一滴のお水でも、すごく大切なんですよね。こういうイベントの呼吸がわかっているんだろうな~。
さて、肝心のお芝居の内容ですが、とにかく俳優さんの演技が巧いんです。そこが重大なポイントであり、オルトが他の演劇団体ときっちり差別化されるところだと思います。
形式としては、一人か二人の役者さんで言葉のやりとりをし、脇に控えた楽器を演奏するメイドが色っぽい吐息とかチャチャを入れます。ちょっとポかリン記憶舎っぽい。だいたいは一人の役者さんの独白状態でしたね。なのに一人芝居に見えないのがすごい。
女優さんが皆さん本当にお美しくていやがおうにも悩殺されますね。エッチというよりは官能的、です。和服美女の大人のエロスです。贅沢ですよ。
倉迫さんは『so bad year』のツアーであまり稽古場にいられなくて、作品のほぼ半分は役者やスタッフが作ったものだとおっしゃっていましたので、構成メンバーのそれぞれの技というか、質の高さに舌を巻きます。そしてスタッフさんも役者さんも、このプロジェクトに参加しているクリエイターさん全員が成功のヴィジョンをしっかり共有されているのがわかりました。集団創作であること、演劇であること、ライブであること、観客参加型であること、エンターテイメントであること等、この作品(アミューズメント)の要素は挙げるときりがないのですが、それを造る側の人間全員によるパワーの結実がすごいのだと思います。
自分が演劇を作る側と観る側を経験して感じるのは、人間の他人同士がどちらからも歩み寄って、他の何にも代えがたい瞬間を共有することが出来れば、これほど幸せなことはないということです。演劇というのは損得なしに他人同士が触れ合う絶好のチャンスですよね。地球上の人間の大半がこれを実感して実行するようになれば、きっと戦争はなくなると思うんだけど。ちょっと安直?
終演後、気分が悪くなって倒れこむお客さんがいらっしゃいました。本当なら心配するべきところなのですが、あぁ、臨場感ある~!と思っちゃいました(笑)。あ、不謹慎ですね、すみません。それぐらい濃密な空間でした。観劇慣れしている私でも3番目のプレイぐらいから疲れてきたぐらいでした。そういう意味では4本じゃなくて3本で終わっても良かったんじゃないかとも思いますね。
私はお昼の回を拝見したのですが、これは夜観に行く方がより色っぽく楽しめたかも。シリーズ化に期待♪
原作:江戸川乱歩 構成・演出:倉迫康史(Ort-d.d)
出演:田丸こよみ・山田宏平(山の手事情社)・ 三橋麻子・岡田宗介・ 鈴木陽代(ク・ナウカ)・ 市川梢/寺内亜矢子(ク・ナウカ)・大内米治(ク・ナウカ)・安本美華(ユニークポイント)
ライティング:木藤歩 土井都希和
オルト・ディー・ディー : http://ort.m78.com/