ハードなテキストと達者な役者さん、スタイリッシュな照明・音響で洗練された空間をプロデュースしている劇団。
大ファンなので賛助会員(Support-N)になりました。
ウィリアム・S・バロウズ著『裸のランチ』というと、アメリカのビートニク文学(50年代末から70年代にかけてアメリカの若者の間で流行)で、難解な作品だということだけは聞いたことがありました。デーヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化したのが有名ですが、私は怖がりだったので見ていません。
小説なのかエッセイなのか曖昧な作品のようで、なにしろバロウズさんご自身があらゆる覚せい剤を試した人であり、ウィリアム・テルごっこで自分の奥様を射殺とかしちゃったようなパンクな人物なのです。
『裸のランチ』の登場人物、『裸のランチ』の著者バロウズ、『裸のランチ』を上演しようとしている男(夏井さん?)、が同一舞台上に存在します。そしてそれを見ている観客、というのも最後には重なってきて、非常に構造的に複雑な作品でした。それでいてライブ感覚が極上なんですよね。
舞台はシアタートラムをほぼそのまま使っていて、内容とすごくマッチしています。舞台奥の壁のど真ん中にある搬入口(シアターコクーンにもありますよね)の真っ赤な扉がポイントですよね。
照明については、いろ~んな種類の照明器具(パトカーについている回って光るライト、じわ~っと点灯・消灯する蛍光灯など)が、それ自体が舞台装飾になるように設置されています。主張のある照明プランだったな~・・・。ホントかっこいいです。渋いです。舞台美術・照明・音響のトータルデザイン(Massigla lab.)という形なんですね。納得です。
見終わってから色んな場面が次々と思い起こされて、一体何だったのかよくわからない状態になったのですが、一つだけしっかりと体に残っていた感想は、すごく官能的だった、ということです。ストイックでクールな大人のエロティシズムでした。今思い出しても背筋から首、後頭部にかけてじ~んと来る感覚がよみがえります。
すごく共感したシーンを1つ。イスに座っている人たちが一つずつずれて移動していき、しばらくは順調に居場所の交換をしていくのですが、何かの拍子で突然一人だけ仲間はずれになります。人間はそうやって仲間を作り、同時に排除していくのだと思います。
看板女優の町田カナさん。コケティッシュでエキセントリックでセクシー。そして演技も巧い。あぁなんて美しいおみ足。めちゃくちゃカッコいい女優さんだと思います。
脚本・演出:夏井孝裕
出演:町田カナ/久保田芳之/原田紀行/平原哲/文珠康明/奥瀬繁(幻の劇団見て見て)
舞台監督:小野 八着(Jet Stream) グランドデザイン:Massigla lab. (舞台美術・照明・音響のトータルデザイン) 照明協力:木藤 歩(barance,inc.) 音響協力:荒木 まや(ステージオフィス) 演出助手: 浅香 実津夫・山本 将也 宣伝写真:山本 尚明 宣伝美術:鶴牧 万里 company posse:篠原 麻美・坂本 弓子・吉川 和海 制作:秋本 独人 制作協力:BankART1929 酒井著作権事務所 製作:reset-N
リセット・エヌ:http://www.reset-n.org/