平成13年度文化庁芸術祭賞 優秀賞、第9回読売演劇大賞最優秀作品賞・最優秀演出家賞(加藤健一) 受賞作品です。見逃したのでリベンジ。
クスっと笑ってポロポロ泣いて、暖かい気持ちで劇場を後にできました。
客席にはご年配の方が多かったです。その「ご年配」のお客様よりも舞台の登場人物の方がかなり年上(60代後半から70代)で、なんだかすごく優しい空気が流れいていました。人生の黄昏を迎えた普通の素朴な人々が、今いちど自分の本当の気持ちについて考えて行動を起こしていくのは、まるで未来の私達を観ているようで、すごく親近感が沸くし臨場感もあるのです。
「年を取れば“すべて世は事も無し”というような心の平安にたどり着くのだろうと思っていたが、全くそんなことはなく、欲望も悩みも大きくなるばかり」と、イカズゴケの四女アリーがつぶやきます。(セリフは正確ではありません)
三女アイダの夫カールは「自分はどこにいる?」「私は何者なんだ?」と悩んでいつも発作を起こします。
長女エスティの夫デイビッドは、妻の姉妹やその家族のことをバカだと思っていますが、いざ夫婦喧嘩をしてエスティが帰って来なくなると、いつもは絶対に足を踏み入れなかった4姉妹の集まる庭によく訪れるようになります。
ルール(常識)はとても大切だけれど、恋愛や革命、突然変異とかって、ルールを破った時に生まれるんじゃないかなって近頃強く思うのです。ルール違反、常識ハズレ、我を忘れたり狂ったり。そんな時に人間は思いもよらぬパワーを発揮して、人間にしか造ることの出来ない世界や、人間にしか味わうことの出来ない感情を生み出すことが出来るのではないでしょうか。叶わぬ夢、許されぬ恋心、がむしゃらの努力。その時、人間はすごく輝いているのです。体中から光を放っているのです。
もちろんむやみにルールを破ることを奨励する気持ちはないですよ(笑)。全く結婚する気のなかった甥のホーマーが、自分が結婚した後に住むはずだった家を叔母(二女コーラ)に乗っ取られて、初めて「自分は40歳になるというのに、なぜ結婚もしていないんだ?自立していないんだ!?」と気づくところが私は好きです。
そして、ホーマーが思いっきり本気で、無我夢中でマートルにプロポーズするシーンは嬉しくってしょうがなかった。あんなにイケてないホーマーがめちゃくちゃイイ男に見えました。
作:ポール・オズボーン 訳:小田島恒志 演出:加藤健一
出演:清水明彦、有福正志、井之上隆、志岡まゆみ、一柳みる、加藤健一、倉野章子、山口果林、竹下明子
美術:石井強司 照明:五十嵐正夫 音響:松本昭 衣裳:加納豊美 ヘアメイク:馮啓孝 舞台監督:飯塚幸之介 井波毅 演出協力:久世龍之介 制作:阿部悦子 中島久仁子 北村浩子 熊谷公美子 長谷清香
加藤健一事務所:http://homepage2.nifty.com/katoken/