『オセロー』は1604年に執筆されたと言われるシェイクスピアの四大悲劇の一つ。『オセロー』といえばテーマは「嫉妬」です。
ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)はイギリスの劇団です。1961年から今の名前になったのですが、その前身となったシェイクスピア記念劇場は1879年から開場しています。イギリスの演劇の歴史はすごいですね。
ムーア人の将軍オセローは異国人ながらもヴェニス政府の将軍となり、美しい妻も娶って幸せの絶頂にいた。自分を副官に昇格させなかったオセローに恨みを抱いた旗持のイアーゴーは、たくみな話術と残酷な所業をかさね、オセローに妻の不貞を信じ込ませる。オセローは嫉妬心から自分の妻を殺してしまうが、それがイアーゴーの策略だったと知ると、イアーゴーを殺して自らも命を絶つ。
原作は16世紀のお話ですが、この作品では1950年代となっています。リアルな軍服を着た男達とステレオタイプの可憐な妻たち。舞台には鉄格子(金網?)の柵と扉があり、牢屋や戦場をイメージさせます。カーキ色の軍服姿の男優さんが背筋をピシっと伸ばしてロボットのように現れて、去っていく。花柄のワンピースを着た、いかにもおしとやかそうな白人女性がしなしな歩く。ことごとく私の好みではないし、退屈だし、どうも慣れない空気のまま前半は終わってしまいました。
後半は、妻デズデモーナの衣裳部屋(着替えるところ)やクライマックスの寝室のシーンなどへの転換が面白かったです。家具や布を使ってシンプルかつスタイリッシュに、そして華麗に場面が変わるのが良い。登場人物もやっと本性を表してきますし。
役者さんが誰と話をしていても“一人”なんですよね。舞台にいるのは自分だけ!というような存在の仕方で、とっとことっとこ話すんです。シェイクスピアのセリフは長い独白であることが多いのですが、それをしゃべっている役者さんにだけ丸くスポットライトが当たって、自分で自分だけに話しかけているような感じ。お客様にも相手役にも、誰にもベクトルが向いていないんです。あれでどうやってコミュニケーションとるんだろう・・・。
イアーゴー役のアントニー・シャーさん。2000年に同じくグレゴリー・ドーラン演出の『マクベス』@東京グローブ座を拝見したのですが、その時のマクベス役もシャーさんだったんですね。う~ん・・・あまり好きではないな~。彼がまさに「舞台には俺一人だけ!」な人なんですよ。
オセロー役のセロー・マークさんご自身が南アフリカ人であることが、この『オセロー』の魅力であり見所のようです。何しろ怒ったときの動作が面白い。あの踊りは何なんだ!?おったまげました。民族舞踊というか、まさにネイティブ・アフリカンの躍動を感じます。でも・・・合ってるのかしら?私は違和感をぬぐえませんでした。
感情移入できたのはオセローの妻デズモデーナ(リサ・ディロン)だけだったかな。イアーゴーの妻エミリア(アマンダ・ハリス)はかっこ良かったけど、役者さんご自身が魅力的なだけな気がします。
それなのに、なんと、最後はじ~んと来てしまいました・・・。たしか1994年に観たエイドリアン・ノーブル演出の『冬物語』@セゾン劇場(今のル テアトル銀座)でもそうでした。なんとな~くシンプルにサラっと進むのですが、最後は涙が出てくるんです。なんてすごいんだ・・・さすがRSC、なのでしょう。
演出:グレゴリー・ドーラン
出演:サー・アントニー・シャー(イアーゴー役)、セロー・マーク(オセロー役)、ほかロイヤル・シェイクスピア・カンパニー座員
主催:日英シェイクスピア上演委員会
ホリプロ内『オセロー』サイト : http://www.horipro.co.jp/ticket/kouen.cgi?Detail=39#