KAKUTA(カクタ)は桑原裕子さんが作・演出する劇団です。
「KAKUTAが梅雨に野外公演」という仮チラシは拝見していましたが、まさか遊園地とは!話題沸騰の公演、逃さず伺えてよかったです。
花やしきというと浅草にあるすっごく小さな遊園地です。私は初めて伺いましたが、本当にスモールサイズでところ狭しとアトラクションがせめぎ合っていました。
さて、遊園地で演劇公演なんて一体どんなスタイルにするのだろう?!と興味津々でしたが、形式としては短編集、いわゆるオムニバスでした。下記の6作品(だったと思います)。
・遊園地やデパート等で興行するピエロ・チーム。息が合わない彼らだが話をしている内に・・・。
・幼なじみのデートを覗き見する男女二人。将来のことを話すうちに二人の間にも恋が?
・ド田舎の島から行方不明の父親を探しに東京に出てきた兄妹。でも父親は見つからない。
・真面目なフリーター男と気まぐれな高給取り女の痴話げんか。予想外のプロポーズ。
・リストラされた男が女子高生と援助交際しようとするが、実は自分は幽霊(になりかけ)だった。
・これが最後のデートだと決めたカップル。なかなかお別れが出来ない。
観客は一度座ったら動けません。役者さんが園内をぐるぐると回ります。つまり同じ短編を6度上演するわけですね。一つの作品が終わるごとに大きな音量で音楽が遊園地中に鳴り響きますので、それぞれの上演時間が同じなのでしょう。
座るエリアによって見え方が違うのは当然ですが、上演するのは同じ6作品ですので、一番差が出るのはオープニングとエンディングですね。私はぎりぎりに入園したので出口付近に座っていましたが、エンディングで幽体離脱(?)から復活したリストラ・サラリーマンと女子高生が“はじめて”出会うシーンが観られました。すごく良かったな~。きっと他のシーンのラストも良いのでしょうね。何度も通うお客様がいらっしゃるのにもうなづけます。
作品の内容は心温まる恋&愛のドラマでした。伝わってくるのは人の優しさです。素直で暖かい、等身大のセリフおよび言葉遣い、そして現実に極近いストーリーに、淡い夢とまぼろしが振り掛けられます。これはKAKUTAのオリジナルの作風だと思います。
最後に無人のジェットコースターが、園内を颯爽と、気持ち良さそうに走ってくれました。花やしきで生まれた皆の恋を暖かく見守ってくれているようでした。そう、花やしきが生きているような気がしたのです。これこそ演劇の意味ではないですか?劇場と観客とともにある、そこに息づく舞台。あぁ、理想の形のひとつですよね。
でも、これはものすごく自分でも不思議だったのですが、実は、観ている最中も観終わってからも、すごくすごく寂しかったのです。楽しそうに走り回っている役者さん達に嫉妬したのでしょうか?それとも遊園地のおおらかな存在に負けたのでしょうか? う~ん・・・たぶん、作品が私の方を向いてくれているように感じなかったからかな。役者さんが観客の方ではなく、大空めがけて演技されているような気がしたからだと思います。でも、野外公演ってそういうことなのかもしれませんよね。
会場誘導だけで一体何人のスタッフさんがいたのだろう?絶対10人以上はいただろうな・・・チケットの種類も多いので受付スタッフも多かったです。それこそ入り口から受付までで10人以上いました(私は10人以上数えられないらしい)。それもそのはず、終演後に遊園地からぞくぞくと出てきた観客の多いこと!えええ??300人は余裕で動員しているのでは?? いやはや、色々感動&勉強させていだきました。
構成・演出:桑原裕子
出演:成清正紀 若狭勝也 松田昌樹 川本裕之 佐藤滋 原扶貴子 高山奈央子 大枝佳織 野澤爽子 田村友佳 横山真二 佐藤陽子 桑原裕子
ゲスト:実近順治 馬場恒行 水野美穂
音響:島貫聡 選曲:真生 舞台監督:坂野早織 衣装:山崎留里子 宣伝美術:川本裕之 宣伝写真:相川博昭 制作:前川裕作 五十嵐正至 佐藤陽子 田村友佳
提携:浅草花やしき 企画・製作:K.K.T.
KAKUTA(角田家):http://www.kakuta.tv/
ゆうえんち浅草花やしき:http://www.hanayashiki.net/