三条会は千葉県を拠点に活動している劇団です。すべての公演の演出・構成は主宰の関 美能留さん。『班女』と『卒塔婆小町』は三島由紀夫の「近代能楽集」に収録されている戯曲です。
「今、客席でどうしたらいいのか、何を感じ取ったらいいのか、全然わからない!でも、なんか集中しちゃう!目が離せない!!」というのが、私が三条会を観ている時の気持ちです。ほんとに、意外なことだらけなんですよね。アンバランスばかりでバランスが取れているというか、いえ、そんな理屈など全く必要としない、有無を言わさない力強い存在なのだと思います。
何もない黒い空間。タキシードを着た坊主頭の男がにやりと笑いながら舞台に出てくる。次に出てきたのは白いドレスを着た、これまた坊主頭の男。激しく早口でまくしたてたり、不敵な笑みを浮かべながら朗々と語ったり、さまざまなしゃべり方と予想外の動作から、シンプルな空間に奇妙な空気が立ち現れます。重厚で熱い、1時間10分でした。
シンプルかつ地味な、じっとりしっかりのお芝居の中に、ものすごく熱いパッションを感じるんですよね。チラシや上演する戯曲などから想像すると、真面目なアート路線の劇団かと思いますが、そうでもないです。いえ「真面目なアート路線」には間違いないのですが(笑)、とにかく可笑しいんですよ。私は自分が突然に笑い出すのが不思議でした。真面目さと堅さからは想像できないブッ飛び具合に、圧倒されるのだと思います。
日本の歌謡曲(?)が流れるのですが長谷川清さんの曲だそうです。ヘナチョコで、ほんっとにダメダメ感が漂う歌です。さらりと歌い上げられているのがさらに情けない(笑)。
『卒塔婆小町』の“今夜”というセリフに掛けて『ウエストサイド・ストーリー』の"TONIGHT"がかかるのも非常にイレギュラー。ヘンな盛り上がりを見せながら、音楽の強弱や展開にセリフと演技がぴったり合わさっているのが、また妙で、すごいのです。
役者さんは一人一人がものすごい個性の持ち主で、きちんと一人の舞台俳優として舞台上に存在されていますね。聞き応え、見ごたえのある堂々とした方々が揃っています。
私は老婆役の岡野暢さんの笑顔がすごく好きです。どうしようもなく嘘っぽくてズルイ、おやじ笑顔(笑)。あのお顔を見ると胸がスッとするのです。「したたかに、ヤってくれるね!!」って、頼もしくなるので。
作/三島由紀夫 演出/関美能留
出演:大川潤子 榊原毅 岡野暢 橋口久男 中村岳人
照明:佐野一敏 音響操作:立崎真紀子 制作:高辻千浩 カンパニーメンバー:舟川晶子 阿左見真紀
企画制作:三条会/(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
主催:(有)アゴラ企画・こまばアゴラ劇場
三条会:http://homepage2.nifty.com/sanjokai/
こまばアゴラ劇場:http://www.letre.co.jp/agora/