赤堀雅秋さんが作・演出するザ・シャンプーハット。フジテレビ「劇団演技者。」でも有名ですね。
私はこれまでに6本ぐらい拝見していると思うのですが、毎回、必ず感動します。今回も然り。赤堀さんって本当にすごいです。
今回も暑苦しい、むさくるしい、息苦しい、日本の隅っこの家に、どん底の人間たちの生々しい生活がありました。無骨で滑稽なやり取りの中に、悲しい心が静かに息づいていました。暗くてじめじめした内容ですが、いつもどおり笑えます。
あらすじです。↓ ここから少々ネタバレします。
母親が死んだとの知らせを受けて、放送作家の明(野中孝光)は十数年ぶりに実家に帰った。実家は肉屋で、弟の清(黒田大輔)が継いでいる。清のぶっきらぼうな女房(滝沢 恵)と、20年前からずーっとアルバイトをしている池田(児玉貴志)が、しがない店をやりくりしている。しかし、母親が死んだというのに清は葬式もしないと言うのだ・・・。
父親(赤堀雅秋)が出てくるきっかけは、すごく迫力がありました。突然にドアをドンドンドン!と叩く音がしたかと思うと、壁や天井もドンドンドンドン!とひっきりなしに叩く音が鳴り響いてきました。その真っ只中に一人で居た明は、異常な事態に何も出来ず驚くばかり。すると、床下からのっそりと、ジャイアンツのキャップをかぶった中年男が現れる・・・。普通の人間ではないモノが現れたということを、シャンプーハットらしい生々しさを以って演劇ならではの方法で表現されていました。シビレますね~。
加山雄三の“君といつまでも”を歌い上げる父親を前に、泣きじゃくる明。ここで、終始クールだった明の過去や、死んでいる母親の存在がリアルになっていきます。あぁ、すごい構成だな~・・・と感心してる場合じゃなかたったです。私も一緒にポロポロ涙を流していました。
「人生は素晴らしいのです!」なんていうセリフが青臭くなく伝えられるのはすごいですよね。赤堀さんの脚本と演出には、軽い嘘臭さがないから本気で入り込めます。明が父親に「さっさと消えろ」と言うのだけれど、父親は「お前が勝手に見てるだけだ」と返すのも深いです。
私は“静かな演劇”と呼ばれるジャンルに入る作品はあまり得意ではないのですが、シャンプーハットの作品では、日常生活の中に生まれる人間のきめ細かな感情とその可笑しみ、そして新しい演出のアイデアを発見したりできるので、見逃せないんですよね。
カーテンコールで役者さんが全員出て来てくださって嬉しかったです。次回は12月にシアタートップスだそうです。
作・演出 赤堀雅秋
出演:日比大介 児玉貴志 多門 優 野中孝光 黒田大輔 滝沢 恵 赤堀雅秋
照明:杉本公亮 音響:田上篤志(atSound) 舞台監督:森下紀彦 舞台美術:福田暢秀(F.A.T STUDIO) 宣伝美術:斉藤いづみ 宣伝PD:野中孝光 舞台写真:引地信彦 制作助手:市川絵美 相田英子 制作:HOT LIPS 協力:アカプルコ 東京書籍印刷 岩堀美紀 荒木友香里 企画制作:THE SHAMPOO HAT
THE SHAMPOO HAT:http://www33.ocn.ne.jp/~shampoohat/